November 29,2019

フィルム時代を知るイラストレーターがポラロイドに見出した古き良きアメリカ

アメリカンカルチャーに触発されたイラストレーターがニューヨークスタイルのダイナーで創る陽気なコラージュ。

僕の前職はファッションスタイリスト。スタイリストの師匠に師事したのが20年前、21歳の頃。当時はデジタルカメラなんて全くない時代で、カメラと言えばフィルムカメラのみ。その時を思うと今はスマホが記録写真変わりになっていて、とても便利ですよね。けど、便利さと引き換えに失ったモノもあるんじゃないかと思うんです。

当時、師事していた師匠に貰ったのがポラロイド600。貰った時のウキウキした感情は今でも思い出したら当時が蘇るくらい、嬉しかったですね。フィルムカメラは現像に時間がかかってくるので、その時のポラロイドのインスタントの感覚は衝撃的でした。それでも今のデジカメやスマホとは違うんです。じんわりと写真が浮き出てくる。デジカメやスマホでは感じることのできないワクワク感やドキドキ感、期待感。写真が浮き出てくるのを待つ時間はたまらないものでした。

僕の記憶に深く刻まれたポラロイドの衝撃と、その時の沸き立つ感情。イラストレーターとして仕事をはじめて幾分か経ち、スタイリスト時代も昔の記憶になり、デジタル社会でその記憶を少し忘れかけていたところにポラロイドの現代版、Polaroid Labで作品を作れることになった時は本当に嬉しかったし、タイミングは運命めいたものを感じました。

Polaroid Labに触って衝撃を受けたのは分割機能。スタイリスト時代に使っていたポラロイド600だと考えにも至らなかったことをいとも簡単にやってくれるデジタルとアナログのハイブリッド機能に瞬時に惹かれ、創作意欲がフツフツと湧き上がりました。

Polaroid Labのアプリでは9分割が最大分割だけど、100分割にしたらどんなになるだろう。
それってパズルさながらだよな。それを自分のイラストとクロスオーバーさせたらどんな作品になるんだろう。写真の中身とリンクするような絵をフィルムの上から直描きしたらどんなになるんだろう。
そんな思いが一気に頭の中を駆け巡り、そこでイメージしたのが四角いポラロイドフィルムを並べた時の、さながらスペースインベーダーのようなクラシカルな8bitドット画。そのイメージで自分が生み出したキャラクターの【もじゃもじゃくん】の再現を試みた完成形が今回の作品です。

時間差でじんわりと画が浮き出てくるのをワクワク横目にしつつ、新品の8枚入りフィルムの箱を破ってPolaroid Labの中にある空のフィルムと交換する。こんな同じルーティンを繰り返しても浮き上がってくるものはバラバラ。暗くなったり、ズレたり。けどそれも味として活かしたし、むしろそのほうが作品に奥行きが出たな、と。直描きの余白部分には真っ白のままプリントする実験的な要素も入れてみました。

作品を作りながら、画面上で展開される画像より圧倒的に表情が豊かだなぁ、って思いました。だから、画像だと画一的な表情にしかならない自分のモノクロ線画に命が吹き込まれたというか、表情がさらに豊かになって自分らしい作品になったなって思ってます。今後もこういうお話を貰えたら、次は色を使った作品にも挑戦してみたいです。

最後に、僕は昔からアメリカの古着やコミック、文化に興味が深く、とても好きなカルチャーなんですが、ポラロイドはその形、質感、インクの匂いなど、どこか古き良きアメリカの匂いがしたんです。手で触り匂いで感じる。そういうところも、作品を作る過程はすごく楽しかったです。

graffiti artist / illustrator
UNO YOSHIHIKO

青森生まれ。
大学で工業プロダクトデザインを学ぶ。その後スタイリスト古田ひろひこ氏に師事し2007年独立。
フリーでスタイリストとして活動する傍ら、アパレルの仕事をきっかけにグラフィックアーティストとして活動を開始。広告、テレビ番組、カタログ、CD・ MVのアートディレクション、オフィスの壁画等を手がけ、独自のポップアートを生み出している。

–UNO YOSHIHIKO(unoyoshihiko.com

カメラでもスキャナーでもない新しいデバイス
Polaroid Lab