May 20,2019

おもちゃデザイナーがSX-70の修理とカスタマイズを始めたワケ

DJ PangburnがPolaroid Originals Magazineに寄稿した記事。

Matt Widmannが子供の頃、家族中がPolaroid SX-70 OneStepカメラに夢中になっていた。WidmannはSX-70の独特の外観と音に魅了され、両親の許可を得てSX-70で写真を撮り始めた。9歳の彼は芸術写真を撮りたいわけではなく、機能面に惹かれていた。

しかし、時代と共に、最初はカメラ、次にスマートフォンで、デジタル写真が普及した。Widmannは、より便利に写真を撮れるようになった時代と共に歩んできた。2008年にポラロイドがインスタントアナログフィルムストックの生産を中止したとき、Widmannはインスタントアナログコミュニティだけでなく、カメラ自体の未来を心配した。インスタントカメラが事実上、時代遅れになると思ったのだ。

だから、2010年にImpossible Projectがインスタントアナログストックの販売を開始したとき、Widmannはそれに着目して、機能するSX-70カメラを見つけ、インスタントアナログ写真を撮り始めた。もっともそのときは、この衝動が、自分の会社(2nd Shot SX70 Service)を通じてポラロイドカメラの修復とカスタマイズを行うビジネスにつながるとは思っていなかった。

「ある意味、ノルタルジックな要素があります。インスタントカメラを使ったことを覚えている人たちがいます。私の出発点もそこでした。しかし、実際に撮影に興味を持ったのは、富士フイルムがパックフィルムを作っていたときで、引っ越し前のガレージセールやフリーマーケットで中古のPolaroid Land Camera Automaticを見つけて、パックフィルムを使って撮り始めました」とWidmannは語る。

Widmannは次々に新しい趣味に熱中するタイプだ。インスタントアナログカメラの撮影と修復に夢中になる前は、フォルクスワーゲンのビートルとバスの修復に熱中していた。ビートルの修復を終えたとき、自分が次に何をしたいかがわからなかったのだ。彼は当時、作動するSX-70カメラを探していたが、まだインスタントアナログに夢中になるほどではなかった。

「購入したカメラは、どれも壊れていました」とWidmannは振り返る。「放っておけばカメラのプラスチックや金属は時間と共に劣化して、もろくなります。8台から9台の壊れたカメラが集まったので、そのままではかわいそうだと思って修復を始めました。」

しかし、Widmannは並みのDIY愛好家ではなかった。2012年にSX-70の修復を始める前、フィッシャープライス社の玩具デザイナーとして働いていたのだ。現在も契約ベースで同社の仕事を引き受けている。ある意味、WidmannはすでにSX-70の心臓部と美学に取り組む準備ができていたのだ。

「そのとき、『カメラが8台あるのだから、1台にまとめて、動かしてみよう』と思って、やってみたら、うまく動いたのです」とWidmann。彼はすぐに、別のSX-70を復元して、小さなカメラ店を営んでいたニューヨーク州の住民に売却した。

「彼が『こういうカメラがもっとあるから直してみないか?』と言ったので、『やってみたいが、ダメにしたら悪い。まだ手探りなので、あなたのカメラは私の実験材料になりますよ。もちろん、ダメにしたら部品の代金を払いますが』と言いました。」

中古のSX-70は、取り扱い方法や保管方法、操作頻度によってさまざまな問題が発生することがある。Widmannの仕事の多くは、湿った地下室に置いてあったSX-70その他のモデルから錆やカビを取り除くことにある。短時間現像(インスタント)に欠かせない歯車やモーターなどのプラスチックや金属部品に小規模な修理を行う必要がある機種もある。

Widmannはたいてい、カメラ底面のレザーを、日本のカメラ貼り替え革専門業者であるAki-Asahi(合同会社アンカー)に特注したレザーに貼り替える。彼は、カメラを定期的に使えばつねに部品が動いて、カメラの状態を保つことを発見した。

「新しいモーターに替える必要があるカメラも、若干の再調整で済むものもあります。オーバーホールが必要なものもあります。オーバーホールは、好きですね。なぜかというと、そういうカメラの持ち主は、特別な愛着を持っているからです。たとえば、おばあさんのカメラで、そのおばあさんが子供たちの成長の記録を撮るために使っていたカメラだったというような。」

しかし、Widmannも他の修理業者も、利用できる部品がなければ、SX-70カメラを修理することはできない。だから絶えずインターネットでジャンク品を探して、修理に必要な重要な部品を取り出して使っている。彼はそうした部品を「ドナー」と呼んでいる。

最初のSX-70を修復した直後から、Widmannは修理工程の写真と動画をインスタグラムに投稿し始めた。それによって、SX-70の修復ビジネスの顧客が増え、さらにカスタムデザイナーとしての道が開けた。

「(カスタマイズプロジェクト)は本当の楽しみが始まる場所です。本当にお客さま独自のカメラを作り出します。前職では、初めキットバッシング、つまり、あらゆるキットの部品を組み込んで、新しい製品を作り、少しだけレベルアップさせる作業をしていました。私はビジネス上の観点から、差別化を図り、SX-70をレベルアップさせる特徴を加えたいと思いました。そこで、分解と塗りを行ったのです。」

「私はカメラのアート的な面が好きなので、分解と塗りは、芸術写真家たちにコンタクトして、それぞれのテイストを表すカメラを作る良い機会になりました。特注のレザーは取り外しできますが、それぞれの独自カラーはずっと残ります。夜光塗料を塗ったカメラは今でも断然気に入っています。」

Widmannのインスタグラムの投稿は、彼自身が存在すら知らなかったポラロイドとインスタントアナログのコミュニティへと導かれた。インスタントカメラを使うアーティストたちはいま、このソーシャルメディアプラットフォームを交流の場として使っている。彼は自分の作品によって再び自分の芸術的背景とつながり、玩具デザイナー兼DIY修理者としてのスキルに融合させることができた。

「修理には主観が入る余地がまったくありません。カメラが動くか動かないかということだけです。カメラを美的に変えることはできません。しかし、審美性や素材や色をカスタマイズすれば、鑑賞するためのカメラの外観を備えるようになるのです。」

Widmannはインスタントアナログのコミュニティやサブカルチャーの中で、懐古的な人々のグループと新しいユーザーグループがぶつかりあっているのを感じている。彼自身は昔を懐かしむタイプなので、今まで使ったことがないカメラを操作する人たちを見るとワクワクするという。

「反応を観察するために、映画『ジョーズ』を初めて見る観客を見るようなものです。当時は仕事に追われていましたが、金持ちになるために仕事していたのではありませんでした。既存のものを保存し、インスタントフィルム愛好家の熱狂的なコミュニティに関与することのほうが大事でした。Polaroid OriginalsがOneStep 2を発表したとき、一気に機運が高まりました。」

Widmannは最終的に、SX-70や他のインスタントアナログカメラ向けの自前のパーツを作りたいと考えている。すでに自分のSX-70を復元するための金属部品の製造が終わり、今はカメラのプラスチック部品を製造する3Dプリンティングを開発している。

「他の中判カメラの修理も好きですが、SX-70カメラへのこだわりをなくしたくはありません。目下、製品開発に取り組んでいます。3Dプリンティングはさまざまな種類のカメラを救う素晴らしいチャンスを作ると思います。」

「新しいカスタマイズ方法と新しい顧客層を開拓する形はもっと沢山あると思っています。Polaroid Originalsが素晴らしい新フィルムストックを作り続ける限り、あらゆる分野から関心が寄せられるでしょう。」

Matt Widmannの作品と仕事の詳細は 2nd Shot SX70 Serviceのインスタグラム でご覧ください。