February 3,2020

二次元を切り取るグラフィックデザイナーが生み出した新たな表現

グラフィックデザイナーに新たなきっかけをもたらしたのは、アラジンの異名を持つ魔法のカメラSX70だった。

僕は、グラフィックデザインという観点において、コピー機やFAX機などで複写した際に生じるノイズやズレを活用する事があります。この手法は、もともと写植の勉強をしていた頃、紙の陰影やわずかなズレ、後処理をする前の複写された感じが好きだったことや、電算(パソコンでの)作業でも一度出力したものを複写し重ねるなどすることで、独自の風味を生み出すため好んで取り入れています。

日常では、デジタルカメラやスマートフォンと言ったごく一般的なプロダクトを使い、身近なものを被写体に写真を撮ったりしていますが、それらの写真データをパソコンのモニターに映し出し、自前のポラロイドSX70カメラで撮影してみたところ、デジタルで切り取られた写真たちが自分好みの風味を持つことに気づき、フォーカスや明るさなど調整し、現像される過程を様々な条件下に置き実験してみました。時には白黒のグラフィックを作成し、それをポラロイドで複写をするなどの行程も試しました。

今回この記事に至ったきっかけは、江沼郁弥という音楽家のアートワークに目が止まったことでした。彼とは10年の付き合いになります。そのアートワークとは、彼がplentyというバンドを解散し、その後一人の音楽家として制作した2作目の『それは流線型』というアルバムです。そのタイトルから、0と1の間の補完的なイメージが湧き、先にあげた手法を試すことを決めました。

"流線型" という響きは、更に "移動" や "旅" を連想させました。そこで、かつて訪ねた様々な場所、特に僕の出身地である北海道や、海外で撮った写真データをパソコンのモニターに映し出し、何度もポラロイドで複写しました。それは、だんだんと自分の記憶を念写するような錯覚に陥る面白さ。フォーカスがゆるい方が憶測になるのではないかと考えてみたり、ポラロイドのファインダーを覗きながらグッと一箇所にクローズアップしてみたり、写真を加工したものを複写してみたりと、繰り返し行われる作業によって、過去の回想の念写作業に僕は夢中になったわけです。

結果として、そこで生まれたアクシデントやイメージは、複写機としての想像を超えたニュアンスを加味してくれました。手元にあるポラロイドSX-70カメラは、もともと写真をやっていた友人が僕に委ねてくれたものでしたが、写真を撮ること自体が本業ではない僕にとって、素材づくりの新しいきっかけを与えてくれたプロダクトです。

-半田淳也 (pppdo.net)
PPP主宰、アートディレクター
1978年生まれ。北海道帯広市出身。
ファッションブランドN.HOOLYWOODのグラフィックや映像を専任し、2008年に独立。フリーランスとして、広告、カタログ、テレビ番組CG、音楽CD・MV・マーチャンダイズ、ファッションブランドや店舗のアートディレクションなどの活動。

江沼郁弥
『それは流線型』
enumafumiya.com